医療法人 社団昭峰会 戸田内科・リハビリテーション科

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パーキンソン病(Parkinson's disease)とは

 院長 戸田 和夫

 

 「パーキンソン病」と言う病気をご存知でしょうか?

 あまり聞きなれない名前かも知れませんが、神経内科の病気としては最も多い病気の一
つです。
 
 1996年のアトランタ・オリンピックで、最終の聖火ランナーから聖火を受け渡された黒人男性を皆さんは覚えていますか?
 
そう!往年の名プロボクサーであるモハメド・アリ氏です。

 彼は度重なる外傷により、パーキンソン病になっていました。

 その他に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に主演していたマイケル・J・フォックス氏も若年性パーキンソン病と診断されています。
 パーキンソン病は、わが国では10万人あたり50~100人程度と言われ、欧米人の比率に比べて約三分の一とされています。

 原因は、解りやすく言いますと脳の一部の老化現象が早くなった状態であると言うことができます。

 具体的には、「ドーパミン」と言う体中の筋肉を動かす命令を司っている成分が、脳の中であまり作り出せなくなってしまった状態なのです。

 しかし、なぜ「ドーパミン」だけを作り出しにくくなるような老化現象がおこるのかは、未だに判っていません。
 
 

 

 上の図はシナプスという神経同士の接合部分での情報伝達の様子を模式的に示した図です。

 

 ドーパミンは神経の情報伝達(次の神経に興奮を伝える役目)を担っていますが、上の図では、向かって左側の神経細胞からドーパミンが豊富に分泌され、右側の神経の受容体(ドーパミンの受け取り口)と結合することで、図の左の神経から右の神経にスムーズに情報が伝達されています。

 

 一方下の図では、ドーパミンが不足しているために右側の神経細胞に興奮が起きず、情報が次の神経細胞に伝達されません。

 

 

 

 



 パーキンソン病の多くは50歳以上の中高年者に発病しますが、先ほどのM・J・フォックス氏のように40歳未満に起こる場合もあります。

 症状しては、手足の振るえや関節のぎこちなさなどから始まり、歩きづらくなったり、立っていても倒れやすくなったりするようになり、やがて全身の筋肉の動きが失われ、寝たきりになってしまったりします。

 この病気によって、特別に余命に関わることはありませんが、水分や食事の飲み込みが悪くなることによって、肺炎になることがあり、これが命取りになることはあります。

 我が国では、「厚生大臣が定める難病疾患」に指定されており、社会保障も受けられるようになっています。

 ここまで書きますと、どれだけ恐ろしい病気かと思われるかもしれませんが、この十年ほどの間で、パーキンソン病の治療は飛躍的に進歩しました。

 多くの疾患がそうであるように、早期に発見できれば症状の進展を最大限に食い止めることも可能となって来ているのです。治療のおおすじは内服治療とリハビリテーションを含めた運動・生活指導です。

 症状に応じては、外科的治療や食事療法などが行われます。

 では、ここでパーキンソン病の早期発見のポイントを紹介していきましょう。

 パーキンソン病によく見られる症状ですが、「震顫(振戦)=しんせん」、「固縮=こしゅく」、「無動」、「姿勢反射障害」の4つが挙げられます。
 
 まず、「震顫(振戦)」ですが、これは特に手の指に見られることが多いです。

 安静時振戦と呼ばれ、特に何かを持ったり、動かそうとしていないような状態、例えば膝の上に手を置いている状態で震えます。

 丸薬を丸めるような動きと表現されることもあります。

 少し進行すると、何らかの動作をする時にも震えるようになります。

 しかし、動かすまい、と意識すると一時的に止めることは可能です。

 次に「固縮」ですが、これは筋肉が固くなって、スムーズな動きが行えなくなる状態です。

 手首や足首に目立つことが多く、続いて肘に多いようです。

 卓球をする時に手首が返しにくいと感じて受診された方がおられますが、この「固縮」をご自身で最初に気付くことは稀なようです。

 そして「無動」ですが、これは運動が遅くなったり、少なくなったりすること(この場合は「寡動(かどう)」と呼んだりします)を指します。

 歩き出す際に、足が出にくく感じたり、字を書いていておかしいと感じる方が多いようです。

 最後に「姿勢反射障害」ですが、これは言わば体のバランスの障害です。

 普通に立っていても前かがみになっていたり、歩いていて方向を変えるときにバランスを崩して倒れそうになったりします。

 これらの症状は、様々な組み合わせで右か左の手もしくは足に起こり、徐々に両方に広がります。
 
 典型的には、右手→右足→左手→左足とか、右足→右手→左足→左手と言う風に進んでいきます。
 しかし、これも先述の通り、治療の進歩により進行しないまま生涯を終える人も多くなっております。
 
 発病してから年月が経ち、症状が進んできますと、自律神経障害として、便秘・起立性低血圧(椅子から立ち上がったりする際、意識が遠ざかるように転倒してしまったりします)などが加わることもあります。

 
 知的機能障害はかなり進みますと伴なう可能性が高くなりますが、当初から合併することはありません

 この病気は、先述の通り内服薬が非常に効果的ですので、決められた通り、正しく内服することによって症状の進行がかなり抑えられます。

 しかし、その反面、内服薬による副作用があり、長期に、しかも大量に飲めば飲むほど それが心配されます。

 副作用の多くはおなかの症状で、むかつきや胃の痛みなどが当初から見られる可能性があります。

 内服薬によっては便秘を来すこともあります。

 そして、もっとも注意すべき副作用は、内服薬の作用が、症状をうまく抑えられなくなるものです。
 内服薬を飲んでも症状が抑えられなかったり、効いているはずのない時に症状が抑えられたりすることもあります。

 症状を抑えすぎることによって、不随意運動と言って、自分で意識しないのに手足が勝手に小刻みに動いてしまうこともあります。

 これらの副作用も、可能な限り素早く対応できれば重症化せずに済む場合も多いのですが、出現するとなかなか良くならないことも多いのが現状です。

 最後に、一見パーキンソン病に似ているものの、明らかに原因が判っているために、パーキンソン症候群と呼ばれているものがあります。

 最初に書いたモハメド・アリ氏のような脳への外傷が原因となった場合などが、これにあてはまります。
 他には一酸化炭素中毒やある種の薬剤によるものもあります。

 また、脳梗塞などの脳血管障害を起こした後に起こる場合もあります。
 これらは、必ずしも薬剤が反応するとは限らないため、治療に困難な場合も少なくありません。

 いずれにせよ、疑わしい症状があれば、可能な限り早期に専門医などに診察をしてもらい、適切な治療を行うことにより、症状の悪化や進行を食い止めることが可能となりますので、留意して下さい。